エチオピアのチーズ『アイブ(Ayib)』とは

エチオピアのチーズ『アイブ(Ayib)』とは

アイブ(Ayib)とは

エチオピアでチーズというとまだまだアイブと呼ばれる伝統的なチーズが一般的です。

最近でこそ、ヨーロッパ式のチーズの需要がだだ上がりしているのは、すでに過去の記事でも触れたところですが、今回はこのアイブに注目してみたいと思います。

見た目

まずは見た目から。

写真のような感じで、豆腐を荒く潰した感じにも見えますし、リコッタチーズにも似ている感じですね。

袋詰で売られる“アイブ”

また、実際に食べる際には、スパイスや香草類と混ぜてディップみたいになっていたりします。

味は、いわゆる日本人の多くがイメージするチーズよりもヨーグルトに近いです。

よく言えば、ほのかな酸味とミルクの香りがすがすがしい感じです。

悪く言えば、コクや旨味があまりありません。

(スパイスなどを混ぜているのも、このコクの不足を補っている感じですかね。)

スーパーに並ぶ“アイブ”

食べ方

ワインのお供というよりは、インジェラのお供で、肉料理(エチオピア式のチキンシチュー、ドロワット)などに、お口直し的に添えられていたりします。

アイブそのもので食べるよりはインジェラと一緒に食べることを前提としていて、日本人的な感覚で行くと白米に添えられているお新香みたいなイメージでしょうか。

アイブの作り方とチーズの作り方

酪農事業を志すようになってからチーズの製造方法についても、素人ながら、本を読んだり、日本国内のチーズ工房を訪ねるなどして勉強をしてきましたが、アイブとヨーロッパのチーズとの間には製造方法にも結構違いがあることを知りました。

そんな中でも一番の違いは、チーズを凝固させる時の方法ですね。

ヨーロッパのチーズは簡単にいうと、生乳に乳酸菌を入れて乳酸菌発酵をさせてから、レンネットと呼ばれる酵素によって凝固させます。

その後、微生物の働きにより熟成させて行くことで色々なチーズに派生していきます。

一方で、エチオピアのローカルチーズ、アイブは乳酸菌を加えた上で、加熱をして、加熱により凝固させています。

エチオピアのチーズではこの熟成過程はありません。

そのため、コクや旨味が少ないのでしょう。

製造方法もエチオピアの方がはるかにシンプルですね。

熟成と保存期間

アイブとヨーロッパのチーズでは、このように製造方法に違いがあります。

で、ヨーロッパのチーズは、さまざまな熟成の方法を用いることによって旨味、コク、香りなどを引き出していますが、これって味だけでなく、保存期間にも大きな影響を与えていますね。

エチオピアのチーズ、アイブは生乳よりは保存もききますが、ヨーロッパのチーズのように数週間とか場合によっては数ヶ月とかは日持ちしません。

実は、僕がチーズがエチオピアで酪農を行う上ですごく肝になるのかなと思った理由にはこの保存期間という側面がとても大きいんですね。

というのも、エチオピア人の約40%がエチオピア正教徒で、エチオピア生協では年間200日超の断食期間があります。(エチオピアの断食は動物性の食品を取らない期間)

この期間って、結構、エチオピアローカルの小規模農家さんでも牛乳を絞っても無駄にしてしまっているケースが多かったりします。(もちろん、色々な宗教が普及しているエチオピアでは全てというわけではありませんが。)

現地の酪農家(加工会社)の方に聞いても最長で2ヶ月間あるこの断食期間の間は売り上げが落ちたり加工しても販売先がなくて困るといった話はよく聞きます。

そんな、現状無駄になってしまっている乳をチーズに加工して日持ちさせることができたら小規模農家さんの収入増に繋げられますね。

また、この断食期間を熟成期間に当てることができれば、断食あけに美味しいチーズをエチオピアの方々にもたくさん食べてもらうことができるかもしれませんね。

いずれにせよ、現状、無駄になってしまっているリソースを活用することができる。

この1点から見てても乳製品加工、特にチーズの加工は本当に大きなポテンシャルを持っていると確信しています。

エチオピアの方々もまだまだチーズの製造方法については、伝統的なアイブ以外についてはほとんど知らない状況です。

僕も素人ですが、少なくともチーズの製造方法を学ぶための情報や人脈へのアクセスは彼らよりもはるかに優れている。

そんなわけで、ものすごく奥の深いチーズの世界に足を踏み入れた僕ですが、将来的な利益の創出に向けて実践を持って取り組むのはすごく楽しいですね。