エチオピア国内情勢 ーTPLFと連邦政府の対峙、国際世論について思うことー

エチオピア国内情勢 ーTPLFと連邦政府の対峙、国際世論について思うことー

すっかり更新が途絶えてしまって久しいですが、ブログを復活させていこうと決意しました。

今回の記事は昨年末にnoteで後悔した記事の引用になります。

————————以下引用————————

エチオピア牧場おじさんの竹重です。

日本はすっかり年の瀬でしょうか?

エチオピアは乾季真っ只中で、私の暮らす南部のアワサはしっかりあちあちな陽気となっています。

今回は、知ってる方は少ないのかもしれませんが、先日発生した、TPLF(ティグレ人民解放戦線)と連邦政府との間で起きた内戦・紛争について色々思うところがあったので記事にしてみました。

では、以下ざっくりとこんな流れで記事にしてみます。

〜〜〜〜〜〜〜〜お品書き〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・国際世論について思うところ

・今回の騒動の経緯

・なぜ、国内世論と国際世論がこうも乖離するのか?

・まとめ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

*注意事項*

TPLF=ティグレ族ということではないということです。TPLFはティグレ族を母体とする政党ですが、ティグレ族が総意として彼らの方針に賛同している訳ではありません。

1.国際世論について思うところ

さて、前段で記した通り、今回エチオピア国内での武力衝突は連邦政府とTPLFの間で起きました。

ロイターなどの一部メディアがこの武力衝突について、TPLFを少数民族と表現していたこと自体にそもそもの私の疑問ははじまります。

記事の中では少数民族についての定義があるわけでもないので、何を持って少数民族とするのかについて少しだけ掘り下げてみましょう。

1.1 TPLFは少数民族か?

簡潔に言うとTPLFは政党であって民族ではありません。

強いて言うなら民族を代表する政党であるということ。

つまり、今回の武力衝突そもそも論で、少数民族 vs 連邦政府なんて構図は存在しないんですね。

今回の対立について誤解してはいけないのが、TPLF vs 連邦政府の構図であって、ティグレ族 vs 連邦政府ではないと言う点。

とはいえ、TPLFの母体となっているティグレ族がそもそも少数民族であるかもついでに考えていきましょう。

スマホに入ってる大辞林によると、少数民族とは

”複数の民族から構成される国家において、支配的勢力を持つ民族に対して、相対的に人口が少なく、言語・文化などを異にする民族。多くの場合、社会の中で従属的な立場におかれている。マイノリティー。”

とのこと。

うん、私の違和感は辞書の説明を基にすると、長きに渡りTPLFが社会的に従属的な立場とは真逆の支配的な立場にあったことが要因なのかもしれませんね。

TPLF以外にも民族を母体とする政党の多くはその政党そのものが民族の総意を得た代弁者として民族 vs 体制と言う構図を作って民衆を煽りがちですが、ここではTPLFとティグレ族を別物として明確に分けて考えて行きます。

さて、少し脱線しましたが、TPLFは『支配的な立場』であったという点については後述します。

では、続いてエチオピアにおける民族構成を以下に示します。
ちなみにエチオピアには80以上の民族が存在していて、以下は母数の多い民族からおおよその比率を含めて羅列しています。

オロモ族 ・・・約35%
アムハラ族・・・約27%
ソマリ族 ・・・約 6%
ティグレ族・・・約 6%
シダマ族 ・・・約 4%

どうですか?

少数民族の定義付け、このエチオピアの民族構成をみて皆さんはどう思いますか?

TPLFは少数民族であると言えるのでしょうか?

民族別に見ても国内80以上の民族の中で4番目に多い民族である点、後述する『支配的な立場』についていた点も踏まえて、果たして少数民族でしょうか?

では、改めて、以下に僕が最初に気になったニュースの見出しを貼ってみましょう。

エチオピア首相、少数民族勢力に最後通告 72時間以内の降伏要求 (CNN)

エチオピア アビー首相 少数民族側に投降呼びかけ (NHK)

皆さんはどういった印象を受けますか?
まるで、エチオピア連邦政府が少数民族を迫害しているかのように感じませんか?

もっというと、NHKの方の記事では末尾にアビー首相がノーベル平和賞を受賞していることに触れ、更にはアムネスティ・インターナショナルが報告している大量虐殺の可能性について触れています。

文脈的には、まるで政府軍が虐殺を起こしたかのように見えますが、ソースのアムネスティの記事を見ると、TPLF側の起こした可能性があることに言及しています。

悪質な印象操作だと感じるのは私だけでしょうか?

まだまだ、疑問に思う部分があるので、言及させていただきますね。

前述した『支配的な立場』のイメージについてです。

TPLFは1991年以降、2018年に現在のアビー首相が就任するまで一貫して、連立与党EPRDF(エチオピア人民革命民主戦線)の中でも特に発言力の強い政党となっていました。

これは1991年に当時の社会主義政権を打倒して、その後2012年まで長期政権を担ったメレス元首相の影響によるものでしょう。

メレス元首相の母体こそ、このTPLFということですね。

つまり、少なくとも20年間に渡り連立与党の中でもTPLFは首相を輩出する特別な政党であった訳です。


1.2 ことさらにノーベル平和賞を強調する意味とは?

もう1つ今回の一連の出来事に対する報道に疑問を感じた点がノーベル平和賞についてです。

前段でも触れていますが、どういう訳か多くのニュースでノーベル平和賞を受賞したアビー首相が少数民族を攻撃なんて書き方をしている訳です。

記事の意図としては3流写真週刊誌のゴシップネタみたいなもので、本来、精錬潔白であるべき、世界平和に貢献したはずのアビー首相が少数民族に対して攻撃を開始したと強調することなのかなと理解しています。

ノーベル平和賞というさも聖人君主のようなワードを枕詞でつけることにより、一段と印象を悪い方へと誘導する手法ですね。

2. 今回の騒動の経緯について

さて、少し話が前後してしまいますが、今回なぜエチオピア国内でこのような内紛とも呼べる事態となってしまったのか?

では、これまでの経緯を紹介してみようと思います。

ことの発端を考える上で、これまでのエチオピアの政治について大まかな流れに触れておこうかと思います。

2.1 近代のエチオピア政治について

近代エチオピアの政治の流れは、ざっくり以下のような感じ。

ハイレ・セラシイ(最後の皇帝) : 帝政時代

メンギスツ(エチオピア労働者党) : 社会主義時代

メレス首相(EPRDF) : 民主化

アビー首相(Prosperity Party、以降PP) : 現体制

大まかに近代のエチオピア政治についてはこんな流れで来ています。

約20年に及ぶ長期政権となったメレス時代にティグレが民族として力をつけてきたのは疑いようのない事実ですね。

今回の武力衝突の発端となったのは、やはりアビー首相の就任ですね。

アビー首相は最大民族であるオロモ族出身で初めての国家元首となった方ですが、就任以降は一貫して民族融和を訴えています。

実際にこの民族融和路線をとってるがゆえに、同民族であるオロモ族の一部勢力からも度重なる反政府運動の標的となっています。

OMN(オロモメディアネットワーク)のジャワール氏などは先日逮捕されましたが、同民族出身であるアビー首相が、メレス元首相のようにオロモ族を優遇した政策を取ることに期待していたようですね。

はい、民族融和政策をとっているにもかかわらず、なぜTPLFとの確執が生まれたのか?という点ですが、TPLFは長らく権力を欲しいまま、汚職の限りを尽くしていた方々ですので、彼らの権力・富が失われていくのが面白くなかったのでしょう。

2019年12月にアビー首相がPPを設立し、元々の連立与党であったEPRDFの中からもTPLF以外はの民族を基盤とする政党もこれに参画しています。

TPLFはどうしても、権力を手放したくなかったわけですね。

こうして、民族融和のビジョンを持っているPPとTPLFの間での溝は深まってきました。

あとは報道にある通り、武力行使という最悪の形で紛争に突入してしまいました。

2.2語られていない、今回の武力衝突の真実!?

エチオピア人の友人などと話をしていると、多く聞こえてくるのが今回の武力衝突の直接の引き金になったのは、なんと先日突然導入された新札なんだとか。

どういうロジックで新札導入が武力衝突の引き金になったかというとざっくり以下のような感じです。

アビー政権:
汚職撲滅しよう!
かつての汚職で溜め込んでる奴らの資産も凍結じゃい!!
表に出せない金を洗うのにどうしよう?
そうだ、新札導入して、タンス預金の裏金使えないようにしちゃおうぜ!
ついでに、新札導入期間は資産の移転もできないように念には念を入れておこう!!

TPLF:
なんだと、あの若造が!!
俺らがこれまでコツコツ貯めてきた金を使えなくするだと!
ふざけんなよ、銀行に行って新札に変えようにも金額も金額やしなー、どないしよ!?
じゃまくさい、武力行使や!
あんなもんぶっ潰しちゃるでー!

はい、私の周囲の友人たちの印象としては、ざっくりこんな感じで武力衝突が起きたのではという見立てになっていますね。

3.なぜ、国内世論と国際世論がこうも乖離するのか?

続いて、なんでこんなに国内世論と国際世論が乖離するのかという点について考察して見たいと思います。

まぁ、ざっくりと国際世論と言ってしまっていますが、主に日本を含む西側諸国の報道ということにしておきましょう。

その他の国のメディアまで確認はできていないので、上で紹介した通り、国際世論としては、概ね、ノーベル平和賞受賞したアビーさんが少数民族を攻撃してるって!?みたいな論調ですね。

続いて、国内世論について周囲の友人の反応なども含めてご紹介すると概ね以下のような感じです。

・TPLFはけしからん、長らく彼らに苦しめられてきたんだ、連邦政府にはこのままぶっつぶしてもらいたい!!(南部主要民族、シダマ、グラゲ、ハディヤなど)

・TPLFがPPに合流しなかったのも意味がわからん。彼らは結局自分たちの利益しか考えてない、ティグレのイメージをこれ以上悪くしないで欲しい(ティグレ族、首都在住)

・TPLFはやりすぎ、結局いつまでたってもティグレは特別だと思ってるんだろ。(アムハラ族、会社経営)

TPLFの支持者がどこまで実際にティグレに行くといるのか正直知りませんが、少なくとも首都及び私の活動圏内である南部の方ではTPLFに好意的な意見は皆無です。

メレス政権時代にやはり、民族の不公平感というのは相当にフラストレーションとして溜まっていたようですね。

3.1 国際世論との乖離の原因を考える

ここからは、友人たちから聞いた情報も踏まえて私が考える国際世論との乖離の原因について触れて見たいと思います。

国内世論では、概ねアビー首相の方針に対して好意的な反応が見て取れます。

これまでの経緯でも説明した通り、TPLFは長い間その権力を持って、かなり国内から反感を買っていたのでしょう。

ただ、国際世論となると一転して、アビー首相に対してネガティブな報道がなされています。

これは主に、在外エチオピア人の多くが、TPLFに近い人物であることが考えられます。

前述した通り、約20年に渡ってエチオピアはTPLFによる統治を許してきました、結果として、海外渡航のチャンスが多かったのも主にこうした権力者に近い人物であったという可能性があります。

実際に、周囲で海外留学を経験しているまたは、海外在住しているエチオピア人の多くは経済的に豊かなケースがほとんどです。

まぁそれはそうですよね、これは古今東西どこを見ても経済的な豊かさというのが機会を得ることに直結している訳ですからね。

私自身在外エチオピア人の民族基盤をデータとして取得することは困難なため、確かめるすべはないので推測の域を出ませんが、当たらずとも遠からずかと思っています。

実際に前段で引用したCNNの記事の英語版でもティグレに対して攻撃を辞めろとティグレ目線での抗議デモの様子などが書かれています。

在外エチオピア人についても色々と思うところがある訳ですが、これは今後気が向いたら記事にしてみようと思いますが、少し前に起きたOMNによる反政府運動については、反アビー運動がエチオピア国外でも結構起きていて、火に油を注ぐような事案が発生しています。

在外エチオピア人からすると対岸の火事、自分の国ではあるが内情を知らないで口だけ出すってのはいかがなものかと思う次第です。

4.まとめ

さて、エチオピアで起きた政府とTPLFによる武力衝突の件について私なりに思うところをまとめて見ました。

先日も、首都では手榴弾が爆発し、3人の幼い命が奪われたりしているようです。

エチオピア国内で暮らす者としてアビー首相の取り組み、方針というのは、結構いいなと思うところも多いので、一方的に国際的にメディアで悪い印象を持たれるような記事が書かれていることに疑問を持って今回記事を書いて見ました。

個人的に、メディア嫌いと言う変なバイアスがかかっているのもあるかもしれませんが、CNNやらNHKマスメディアを鵜呑みにするのは違うのでは?

マスメディア側も報道のプロとして取り上げる以上は、その内容に責任を持って欲しいなと思うわけです。

もちろん、私のこの記事についても疑問に持っていただいて構いませんし、真実はどこにあるのか、考えるきっかけぐらいに見てもらえたらなと思っています。

いずれにせよ、マスメディアを信頼しすぎず自身で意見を持つ、気になったら調べてみる、マスメディアがおかしなことをしていたら、声を上げるなんてのも大事ですよね。