ビジネスアイディアを固めるまで⑤
ビジネスアシディアを固めるまでシリーズも最後になりますが、現在進行形で準備を進めている、牧場・乳加工品製造事業について、今回は書いていきますね。
走り回って気づいたこと
実はこれまで書いてきた、電動バイク、衣料品輸入、コーヒー輸出、ゲストハウスなどなどのアイディアを検証する過程での気付きが、牧場・乳加工品のアイディアに繋がっています。
現地の方々に寄り添うマインドセット
エチオピアにきてから多くの外国人と情報交換をしてきました。
やはり、外国人はエチオピアの方々と比較すると、僕の欲しい情報にアクセスするのに非常に有効ですからね。
実際、ビジネスの検証を行う上でも、彼らの情報はすごく活きました。
一方で、そんな情報交換の際に、すごく大事なことに気づく経験がありました。
ドイツの援助関係の機関で働く人と情報交換をしている際のこと。
[voice icon]エチオピア人のためにドイツから使われなくなった車椅子を輸入する手続きをしているのに、もともと計画していた数量よりも少し多い車椅子を送った結果、聞いていた話と違うからって、止められてるんだけど。ありえなくね?エチオピアのためにやってやってるのに、数増えてんだからいーじゃん?[/voice]
[aside type=”normal”]とあるドイツ系援助団体で障害者支援をしている女性にどんなことをしているか聞いた時の彼女の発言[/aside]
いやいや、『エチオピアのためにやってるのに、』ってどこから目線って思いませんか?
僕自身結構、この人と話していた時のことは、印象に残っていて、すごく不愉快でしたね。
実際に、援助を受けている側のエチオピアの方々の中にも現在の援助のあり方に疑問を持っている人もいたりします。
例えば、僕の友人の1人はこんな興味深いことをいっていました。
[voice icon]援助はありがたいけど、なんで援助機関の人たちは、魚をくれるのに、魚の釣り方を教えてくれないんだろうか?
魚の釣り方を教えちゃうと、自分たちの仕事がなくなるからかな?[/voice]
これって、仕事としての援助の核心をついているような気がしてすごくハッとしましたね。
新興国の方々だからといって上から目線でバカにしてちゃいけないんですよ、やっぱり、援助を受けている側も気づいているんですから。
これは、たまたま援助に関するケースでしたが、僕自身この国でビジネスをさせていただく上で、やっぱり真剣に現地の人に寄り添って、現地の方々のためにってマインドセットを忘れてはいけないなと強く痛感した出来事でした。
お金を稼ぐことこれを否定してはいけませんが、稼ぐプロセスに置いて、やっぱりエチオピアにお邪魔させていただいていることを常に忘れずに、現地の方々のためにもなるビジネスモデルを構築することがすごく大事だと信じています。
からのやっぱり、Win-Winの関係を築くこと
前述の通り、現地の方々のためになるビジネス=Win-Winの関係を築くこと。
この気付きをベースにやはりこの国の大半の方々が従事している農業に着目して、彼らと共に未来を描けるビジネスをと思い、エチオピア国内の地方、農地を中心に見て回りました。
その際に気付いたこととして、牛とか羊がどこにでもいるんですよね。
その割に、スーパーに行っても極端に少ない乳製品。
ましてや輸入しているじゃないですか。。
そして、なんなら日本よりも高い価格。
これは、この国で乳製品の加工事業を始めれば、牛乳を生産する『農家の方々』、それを消費する『消費者の方々』、そして、それを始めようとしている『僕自身』、近江商人の三方よしの日本カルチャーをこの国に根付かせることができそうだと考えました。
牧場・乳加工品のポテンシャルを見極める。
ざっくりと、こんな流れで牧場・乳加工品事業を始めようと思い至ったわけですが、実際にこの事業のポテンシャルを見極めるために行った調査は以下の通りです。
・食肉、乳製品事業者協会へ意見交換
・消費の現場(レストラン、ホテル、小売店)への聞き込み調査
・大学教授との意見交換
・地場の零細農家さんへの聞き込み調査
こうした地道な聞き込み調査の末、見えてきたこの国の酪農事業の課題点、問題点ですが、ざっくり以下の通り。
・加工事業者の不足
・断食期間における牛乳廃棄の問題
・販路までのアクセス
加工業者の不足
一部外資でもオランダ系などの投資がありますが、地域に偏りがあり、引き続き加工業者の不足は、この国の酪農産業の抱える大きな問題点になっています。
政府としても、農業はもっとも力を入れている分野ですが、投資関連の規制や品質管理の観点など参入障壁が高く思うように加工業者を増やすことには至っていません。
断食期間における牛乳廃棄の問題
『断食明けのエチオピア』でも書いた通り、エチオピア正教では、年間230日間の断食期間があります。
この感、動物性タンパク質の摂取が禁じられるので、当然、牛乳も消費が低下します。
現状、加工設備を持たない多くのエチオピア国内の農家さんは、この断食期間に牛乳を廃棄してしまっているそうです。
日本人の感覚からするとすごーく『MOTTAINAI』ですよね。
加工設備があれば、保存の効くチーズ、バターなどに加工してこの間の牛乳を無駄にすることなく、かつ農家の方々の収入を維持することもできますね。
販路までのアクセス
地場の農家さんの多くは、販路までのアクセスを持ちません。
そのため、現在でも多くの農家さんが近所の方々と物々交換をしていたりするわけです。
モノとモノとしては交換できているものの、貨幣を得る機会を失ってしまっているのは、近代化が進むこのエチオピアでも大きな問題となっています。
これらの問題点を解決することができれば、、、
これらの問題点は、少しの技術と少しの設備を持つことで概ね解決できます。
ただ、依然として世界最貧国のエチオピアでは、こうした技術・設備にアクセスするのが非常に難しいわけです。
ここまで、調査をしてきて、決意しました!
『Food for Future plc』設立によって現地の方々とこの状況を変えよう!と。
これがビジネスアイディアを固めるまでの道のりでした。
まだまだ、道のりは長い・・・
そんなわけで、法人設立の準備を現在も進めている僕ですが、エチオピアが他の東アフリカ地域と比較して際立って外国直接投資が少ない印象を受ける理由として、制度上の問題があると痛感しています。
インドネシアでも法人設立のサポート業務に携わっていたため、ある程度新興国でのビジネス立ち上げについては理解のあるつもりでしたが、この国に投資するのは、かなりハードルが高い。
というのもルールが不透明、投資に関わる条文なんかほとんど出てこないんですね。
全体感を持って体系的に組まれた制度ではないので、手続きAを行うために手続きBを済ませている必要があるのですが、手続きBを行うためには手続きAを済ませている必要があるみたいな無限ループに直面するのもしばしば。。
そんなこんなで、かれこれ会社を辞めてから1年半以上が経過してしまいました。
それでも、やっぱり僕はこの国が好きで、この国の人たちがすごく好きです。
少し話がそれましたが、ビジネスアイディアを固めるプロセスについて計5回のシリーズでした。
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